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  • 2010/7/22

    「全熱交換素子用セルロース透湿膜」セルロース学会技術賞を受賞

    このたび、当社開発製品「全熱交換素子用セルロース透湿膜」が、平成21年度「セルロース学会技術賞」を受賞いたしました。
    全熱交換素子とは、換気装置に組み込み、外気と屋内空気を入れ替える際に熱交換を行うための部材です。当製品はこの素子の心臓部をなすもので、当社のセロファン製造技術をコア技術として開発した当製品が、今回受賞対象となったものです。
    建築基準法の改正により、シックハウス対策として現在屋内空気の24時間常時換気が義務付けられておりますが、夏場や冬場など外気と屋内の温度差が大きい季節のエネルギーロスが大きな問題となっています。空気中の熱には温度(顕熱)と湿度(潜熱)の2種類があり、これらを総称して全熱と言いますが、当「全熱交換素子用セルロース透湿膜」を使用した対向流型全熱交換素子(フロンティア産業(株)と共同開発)では、その交換率が80%以上という高効率を実現しています。

     

    図版

     

    当製品は、セロファンの特徴である透湿性に着目し、木材由来のセルロースを化学処理して液状にしたビスコース(セロファンやレーヨンの原料)を加工した紙を全熱交換素子用透湿膜に応用したもので、基材表面にセルロース薄膜を形成させることで、従来にない高透湿性を達成しました。従来の透湿膜と比べ、湿潤強度が極めて高い点でも優位性があり、既に性能評価も終え、実用化も始まっています。本透湿膜を使用した対向流型全熱交換素子の全熱交換率は80%以上のため、従来製品に比べても格段に高い交換性能となっており、地球温暖化対策として家庭やオフィスでの省エネが急がれる社会背景を受け今後普及が進むものと見込まれます。
    なお、当社の本賞受賞は、平成9年度「ビスコパール」、平成16年度「セルガイア」に続いて3回目となります。

    「セルロース学会技術賞」とは

    セルロース学会により、セルロースおよびその関連物質に関する技術について、
    優秀な研究、開発または発明を行い、セルロース関連の工業の発展に貢献した会員
    または会員を含むグループに毎年1回授与される賞です。

    >>セルロース学会ホームページ

    「全熱交換素子用セルロース透湿膜」について

    全熱交換器は、全熱交換素子を用いて、給気用と排気用の2つのファンにより、室内空気が持つ温度、湿度(両者で全熱)という熱エネルギーを逃がすことなく室内の空気を換気する装置です。全熱交換器を使用することで、冬場や寒冷地などでは室内外の大きな温度差を生じることなく換気できることから暖房コストが低減され、また夏場も暑い外気を室内の冷房した空気と熱交換した後、室内に取り込めるため、優れた省エネ効果が望めます。
    熱交換の心臓部である全熱交換素子については、従来からの直交流型と近年開発された対向流型の2タイプがあり、現在は前者が全熱交換率50-65%と低いながらも市場の9割以上を占めています。一方、後者は構造が複雑で割高とはなりますが、80%を超える高い全熱交換率が期待できることから、今後切り替えが進むと予想されています。

     

    図版

     

    素子内では、給気と排気の全熱(温度+湿度)交換が透湿膜を介して行われます。この透湿膜に要求される特性は、水蒸気は良く透過するが、汚染された空気の悪影響を防ぐために空気は透過しにくいことです。紙または不織布に、親水性がありながら水に不溶性のセルロース膜を形成することで、従来品よりも高い透湿性と湿潤強度を両立させたことが当製品の最大の特徴です。本透湿膜を対向流型全熱交換素子に使用することにより、80%以上という高い全熱交換率および低圧力損失が実現しました。

     

    図版

     

    全熱交換器の現在の市場規模は、年間約40万台で約300億円程度と推定されますが、環境・省エネ意識の向上を反映し、2003年の建築基準法改正では新築住宅に所定能力の換気設備を設けること、また2009年の省エネ法およびビル管理法改正では一段の省エネルギー化が義務付けられました。家庭、オフィス等におけるエネルギー消費のうち、冷暖房空調は約3割を占めており、そのうち換気ロスは40%といわれています。交換率80%の全熱交換器を設置すれば、約10%(=30%×0.4×0.80)の省エネ効果が期待でき、家庭やオフィスでのCO2削減の必要性が注目される中、当素子を組込んだ全熱交換器のさらなる普及が期待されます。

     


    pdf「全熱交換素子用セルロース透湿膜」セルロース学会技術賞を受賞


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