REBIOSが生み出していくのは、
環境にやさしい人々と未来

包装の観点から、プラスチックをめぐる環境問題の課題解決に取り組む。
そんな想いを胸に、生分解性素材の研究を続けてきたレンゴーから誕生した
「REBIOS(レビオス)」について、開発や販売に携わる社員の言葉から、詳しく紐解いていきます。

寺嶋 沙樹
開発営業第二部
大阪開発営業課
2013年入社

開発営業担当として、お客様を担当する営業の販促活動に対し、技術的な面でのサポートを行う。REBIOSの特性や魅力を営業やお客様に伝えている。

四本 太郎
中央研究所
包装材料研究部
研究第一課
2011年入社

元々は中央研究所ではなくセロファンの製造を行う武生工場にて勤務していた。異動後すぐに本プロジェクトに加わり、以降「紙包材」に関する開発を担当している。

今井 景子
中央研究所
包装材料研究部
研究第一課
2002年入社

本プロジェクトに加わる前は、プラスチックフィルムの機能性付与に携わっていた。現在は、「セロファン」の特性を理解し、「機能性セロファン」の研究開発を担当している。

グループの結束力が生み出した新素材

全世界において、社会的な問題として取り上げられている「プラスチックによる環境汚染問題」。日本中の大手メーカーなどが、サステナビリティへの取組みとしてプラスチック製品の削減を掲げる中、レンゴーとしてもパッケージの観点からこの問題に立ち向かうべくして着目したのが、植物由来で生分解性のある「セロファン」や「紙」である。その秘められた可能性を探るべく、一つのプロジェクトが誕生したのだった。

今井
REBIOSの開発において、私は「セロファン」への機能性付与を担当しています。セロファンは、高透明で生分解性、耐熱性、耐油性など、元々さまざまな機能があるのですが、包装材料に必要な性能をさらに付与することで、「包装製品」として生まれ変わらせる役割ですね。具体的な作業として、まずは、A4サイズのセロファンの上に塗材を塗り、所望の性能が発現するか確かめていきます。塗材は種類が豊富にあるため、「セロファンと相性がよさそう」、かつ「必要な性能が発現しそう」なものに、アタリをつけながら地道に試しています。現時点で調べ切れていない塗材も多々あり、この機能性の付与にはまだまだ可能性を感じているところです。
四本
今井さんがセロファンを担当されている一方、私は「紙素材」における機能性の付与に携わっています。具体的には、紙に塗材を塗り、「紙包装」としての機能をもたせていく仕事です。そのため、日々塗材メーカーさんとやりとりをしながら開発を行っています。また、私たちの最終的な目標は「工場生産できる製品をつくりあげること」です。その実現のため、工場のメンバーと私たち研究所の間を取り持つ橋渡しの役目も担っていました。
寺嶋
私は、開発営業担当としてREBIOSの特性を把握し、営業担当に解説をしつつお客様への提案のサポートを行っています。営業部門と開発部門をつなぐパイプ役ですね。また、社内だけでなく、直接お客様先にお伺いして、「レンゴーとしてこのような新しい技術ができました」とご紹介することもあります。加えて、お客様がご所望の包装を製造するにあたり、どういったグレードのセロファンや紙が適しているのか、中央研究所のメンバーの力を借りながら最適解を探していくことも私の役割です。研究所のメンバーの協力によって得たデータを根拠として提示しながら、最適な包装資材をお客様にご提案しています。
今井
このREBIOSを開発することができた一つの要因として、レンゴーだけではなく、グループ会社の協力体制があったことを強く実感しています。レンゴーだけでは、セロファンや紙に塗材を塗って、機能性を高めた素材をつくるところまでしかできなかったものが、グループ会社のノウハウや加工技術によって、包装製品にまで仕上げることができました。
四本
本当に今井さんの言う通りですね。他社に製造をお願いする場合は開示できる情報に制限がありますし、逆に向こうの方でも開示できる設備や技術の情報には制限があります。また、一つの製品に多くの会社が関わるほど最終的な製品の生産コストは高くなる傾向にあるのですが、グループ会社内で完結させることで、コストを低く抑えることができます。結果としてそれぞれのノウハウが守られ、かつ利益が生まれやすいという点でお互いにメリットが有りましたので、工場のテストも比較的好意的に受け入れてもらえたのだと感じていますね。
寺嶋
私も同じ意見です。フィルムの加工を専門とするグループ会社もあるので、その知識やノウハウを共有してもらえるのはありがたいですよね。一緒にいいものをつくろうとしてくれるというか。
今井
そうですよね。グループの結束力があったからこそ、REBIOSというプラスチック代替素材を世に送り出すことができたのだと思います。

それぞれの困難を乗り越えた先に

「プラスチックを削減した製品を」。そんな世間からの想いや期待に、一刻も早く寄り添っていきたいという使命感のもと開発を行っていたレンゴーだが、その道には多くの困難が待ち構えていた。開発者たちは一体どんな壁を乗り越えて、REBIOSを世に送り出すことができたのだろうか。

四本
「プラスチックの削減」は、当時社会的にも非常に重要なテーマとなっており、当社以外にも多くの企業が同様の開発を行っていましたので、開発スピードは当初から重視していました。通常の開発では、研究所で90%程度完成した段階で、工場に実機テストを依頼することがほとんどです。ところが、このREBIOSではとにかくスピードを重視していたことから、研究所で50%程度の完成度であっても「ここまでできているのでなんとかお願いします!」と工場に持ち込み、テストを依頼していました。あのときは内心ドキドキしていましたね。
今井
本当に、今までにこのタイミングで、工場での実機テストの依頼はしなかったと思うことはありましたよね。私たちの中では、正直まだ課題もある状態での持ち込みだったと思うので。それでも、ある程度実機での見通しが立つようでれば、テストをやってみようということで行動していました。その結果、通常よりも早い段階で実機における課題を抽出できました。実際に、A4サイズで塗材を塗るのと1~2m幅で数千mの長さのセロファンや紙に塗材を塗るのは全く扱いが異なりますし、研究所内の小スケールで成功したとしても、実機でうまくいかなければ意味がありません。工場の実機で試したからこそ見つかった課題も多々あったので、早め早めに行動できたことは非常に良かったと思います。
四本
やはり、工場にテストをお願いするにあたっては頭を悩ませました。研究所では自分一人の都合で実験ができますが、工場ではそうはいきません。日々の生産をしている中で、その生産を止めてテストを行う訳ですから、たくさんのお金と人手と時間が必要です。そのうえ、対応しても利益に繋がるという保証もないので、工場からすると新製品のテストというのは基本的にはリスクが大きいものです。それでも、やってもらわなければ開発が進まないため、工場側の立場で考え、どうメリットを伝えるか、といった部分に一番苦労しました。
寺嶋
開発側ではそうしたハードルがあったのですね。私の場合は、お客様にREBIOSの特性をどう伝え、どう売っていくかが、現在も課題になっています。ベースとなっているセロファンや紙は、プラスチックと比べるとコストが高く、耐水性や酸素の透過を防ぐ機能が劣るという弱点があります。しかしながら、環境にやさしく、優れた製品であることは間違いないと確信しています。だからこそ、コストが少し高くても、機能性が少し劣っていても、それ以上に付加価値があることを伝えていかなければならないと考えています。

日本の未来を変える、新製品として

さまざまな困難を乗り越え生まれたREBIOSを、世の中に広め続けているレンゴー。世界の流れを汲み、先陣を切って環境問題に取り組むその姿は、人々の心を動かすとともに、日本の未来を変えていくだろう。そして、その実現に向けた開発メンバーの努力は、これからも続いていく。

今井
私は、このプロジェクトをきっかけに、プラスチック問題への興味を抱くようになりました。この仕事をするからには、日本だけでなく世界の流れを知っておく必要があると思い、セミナーにも参加したんですね。そこで得たのは海外の考え方です。海外の環境先進国では、資源を循環させること自体がビジネスの前提となっていて、ものをつくりはじめる時点から循環を見据えています。そしてそれが新たな事業や雇用を生み、経済成長を促していくのだと学びました。こうした考え方を基準とする日本の企業は増加していて、それに対応していくことこそ、レンゴーの使命であると実感しています。
寺嶋
本当にそうですよね。私は、REBIOSを通じてお客様の環境に対する考え方と向き合うようになりました。実際にお話を聞いていると、今井さんの言うような「私たちは環境問題に対して真正面から向き合っていくんだ」というお客様もいらっしゃれば、「どちらかというと消費者のイメージアップのために掲げている」というお客様もいらっしゃいます。ホームページなどの表面の部分だけで見ると同じように見えるのですが、根本は全く違うことがわかりました。もちろん、企業が問題意識を持ち、環境問題に取り組んでいただけることが一番ですが、そのためにはまず消費者の意識を変えなければならないと考えています。やはり、環境にいいものをつくると、その分コストがどうしても高くなってしまうんですね。それを消費者側にも理解してもらい、購入してもらえなければ、企業側も中々踏み切れない。この考え方を私たちとしても世に広めていく必要性がありますし、自分自身も環境にいいかどうかを基準にして、ものを選べるようにしたいと思っています。
四本
お二人とも、開発に対する姿勢として素敵な考え方をありがとうございます。REBIOSが社会や環境へもたらした価値というより、私個人へもたらした価値という視点になりますが、私はこのプロジェクトをきっかけに、多くの方々とのつながりができました。塗材メーカーさんだったり、印刷や製袋の加工業者さんだったり、日本のモノづくりに関わる方々と情報を交換できるようになったことは自分にとって大きな財産だと感じています。今後仕事を進めていく上で、きっと大きな助けになると思うので、このつながりを大切にしていきたいですね。
今井
四本さんの言う通り、一人では解決できないことがこれまで本当にたくさんありました。色々な方にご相談して、新たな視点をいただくことで視野が広がった上に、自分自身の考え方の裏付けとなって自信を持つことができたと実感しています。この先もREBIOSの開発は続いていきますので、これまでの自信を力に変えながら、今後も環境にやさしい製品づくりに尽力していきたいと思います。