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レンゴー環境経営講座

CO2排出量削減への取組みと排出権取引
講師:レンゴー(株) 執行役員 製紙部門生産本部長 兼 環境・安全衛生部担当 若松 操


1. Cフルートへの転換
2. CO2排出の現状
3. レンゴーの取組み
4. 身近な省エネ

 

Cフルートへの転換
段ボールの大きな特徴は、リサイクル素材であるということです。段ボール工場から段ボールを利用するユーザーに段ボールを納めてそれが小売店に行く。いわゆる動脈産業としての物流を担っているわけです。そして商品が売られた後は、箱は古紙回収業者に回収されていきます。古紙回収業者が回収するところからは静脈産業の部分で、製紙工場へ戻って、製紙工場がそれをまた溶かして原紙を作って、そしてまた段ボール工場へ納めるというシステムができあがっているのです。
一方、皆さんも参加されたと思いますが、神戸の大学生が企画実行した「ごみ減装(へらそう)実験2008」が今年の5月から8月にかけて行われました。石川先生の主宰する「ごみじゃぱん」がその運営を行ってきたこのイベントに、われわれレンゴー株式会社も参加しました。皆さんの活動によって大きな成果が得られた立派な社会実験だったと思います。実は、われわれもこの「へらそう」という取組みを行っています。何かと言いますと、AフルートからCフルートへの転換です。Aフルートというのは厚さが約5mmで、Cフルートというのは厚さが約4mmです。世界的に見るとCフルートの方が多いわけですけれども日本ではAフルートが主流でした。積み重ねた時に、5mmと4mmですから当然20%の厚みの差があるわけです。それから、輸送する時にも輸送効率が変わってくる、保管場所も少なくてすむ。もう一つ、Cフルートにすれば段ボールの軽量化が図れます。
段ボールの重さは、㎡当たりの重さは、1990年をベースにすると今、段ボール業界では4%強軽くなっています。その中で当社の段ボールは7.4%ぐらい軽くなっている。これは、一つはこのCフルートを推進しているということの表れです。

 

講義風景画像

 

CO2排出の現状
日本は、京都議定書発効時に、温暖化ガスを6%減らすという約束をしています。一方、日本の基準年である1990年のCO2の排出量は12億6,100万トンと設定されていますが、2007年は13億7,000万トンと、基準年から8.6%ぐらい増えています。
おおむね産業界で35%、業務関係(商業・サービス・事務所等)が18%、運輸で14%、それから家庭で19%となっています。それでは産業界の中でどういう形になっているかというと、産業部門の中では製造業が94%を占めています。その中、鉄鋼、化学、窯業、機械。その次にわれわれが属している紙・パルプ産業が位置づけられています。つまりエネルギーをたくさん使うところが、それだけCO2の排出量も多いということです。
その中で当社のCO2排出量はどういう状況かと言いますと、1990年には107万7,000トンのCO2を排出していました。2007年は88万6,000トンと、17.8%減らしています。主に1990年から99年の間燃料転換等を行って減らしてきているという状況です。
日本製紙連合会という業界団体がありますが、その中で経団連の指導主導によって「自主行動計画」を策定しています。当初設定したのは、2010年までに化石エネルギー起源のCO2の排出原単位を1990年度比10%削減するという目標です。つまり京都議定書にある6%を達成していくために、われわれ製紙業界で、排出原単位、つまり生産量当たりの排出量を10%削減しようという目標を掲げて取組みを始めました。
一昨年、この目標をもう少し高くしようということで見直しを行いました。2008年度から2012年度の5年間平均で、同じくこの化石エネルギー起源のCO2の排出原単位を16%削減しようということで、10%から16%に目標を高くしています。

 

講義風景画像

 

レンゴーの取組み
その中で当社は、2007年度のCO2排出量を17.8%削減することができました。2009年度、つまり来年われわれの会社は100周年を迎えます。ということでさまざまな目標を2009年度に置いていますが、「エコチャレンジ009」という形で、CO2を22%削減しようという目標を掲げています。
では、そのCO2の排出量の削減についてどんな手法を使っているかということについて、現場の話をさせていただきます。1番目は、製造業として永遠のテーマですが「生産性の向上」です。生産性、速度を上昇させて効率化するとか、それからこの「製品歩留」というのは、原料投入量に対して製品の仕上がり量を多く、高くするという取組みです。
2番目には、「新しい生産技術」の導入です。これは新しい生産技術、新しい管理技術、そういうものを導入することによって、より効率化を図っていくということです。
3番目には「省エネ設備」の導入です。ガスエンジンとかそういうものです。それから後でもまたお話ししますが、原料、古紙を処理していくのにより効率的な処理をするという、そういう設備の導入です。
4番目には「エネルギー転換」です。エネルギー転換の中で一番大きいのは、燃料の転換です。われわれ製紙産業では、水を使って、その水の中でパルプ繊維を溶かします。それを機械的に連続して24時間行っています。そういう所では、水を除去する、そして水を乾燥するという工程があります。つまり機械を動かすのにエネルギー、電気エネルギーを使う。それからその水を使って作ったものから、水を除去するために熱エネルギーを使うという大きなエネルギーを使っているわけです。そのため、エネルギー転換を行うということが大きなCO2排出量の削減手法になっています。当社のエネルギー構成は、1990年のころには、重油などの液体燃料が66%と、3分の2を占めていました。それをガス、購入電力、そして再生エネルギーに1990年以降徐々にシフトしているというのが現状です。
今ではガスが52%と半分以上を占めるという状況になっています。その反対に重油は、90年度に66%、それから2000年度でもまだ42%と一番多かったのですが、現状ではもう7%しか使ってないという状況になっています。
都市ガスの利用には非常に大きなコスト負担がありますが、コスト負担よりも大気汚染防止法などの規制に対応する設備投資が不要となったことは大きなメリットでした。そういうことが、われわれが都市ガスの利用を大きくしていくのを後押しした理由です。結果的にCO2の排出量も削減できたというところです。
当社は、特にCO2の排出量の83%を占める製紙工場が都市部に多く、例えば大阪ガス、東京ガスの配管が近くまで来ていたというところで切り替えがスムーズにいきました。結果的にCO2の排出量が減ったということをお話ししましたが、まず、燃料転換でCO2排出量がどれだけ下がるかというと、燃料の熱量当たりの排出量が石炭では2.471万トン-C/PJ、それに対してC重油が1.954万トン-C/PJ。つまり重油と石炭だけを比べても2割以上石炭の方が多いわけです。これが都市ガスになると1.382万トン-C/PJになる。つまりC重油から都市ガスに燃料転換することによって、CO2の排出量は4割削減できるということです。ですからこれをわれわれは推進してきたということです。
それから、熱と電力を両方供給する設備、発電するだけでなくその際発生する熱も活かそうというコージェネレーションという設備もあります。例えば、コンビニエンスストアでも、小さい発電機を置いて、熱や冷熱、冷やすのにエネルギーを使う、それから照明等に使うというようなことも行われています。

 

身近な省エネ
それ以外のわれわれの省エネへの取組みを紹介します。「省エネへの取組み」というと、何か格好良く聞こえるのですが実はそうではありません。われわれが行っているのは、皆さんの周りにも数多くある事例です。例えば下の小会議室に入ると、照明のスイッチの所に「こまめに消灯しましょう」と書いてあります。皆さんがこまめに消灯するというそのアクションが、ひいては日本を救うのです。
それでは、それぞれ具体的なところをお話しします。パルパーという、古紙と水を混ぜて、撹拌させることによって溶かしていくという装置に従来のものに対して3割以上省エネになるという設備を導入しています。社外の省エネにつながる技術情報や開発機械は積極的に導入しています。
それから、これはわが社で考えて取り組んでいるものです。段ボールを作る時に、紙の温度を上げて、段を作りやすくする。それから糊を付けてそれを乾かすという工程があります。ここでの熱エネルギーの熱効率を良くする。それから余剰蒸気を回収して10%ぐらいの熱エネルギーを効率化した設備を導入しています。
われわれはそういう省エネの取組みとか設備導入だけでなく、社員への啓発も行っています。例えば先ほどの省エネ「こまめに消灯しましょう」ということを行っていますし、「チーム・マイナス6%」への参加を行って、「事務所の温度コントロールをしょう」であるなどの啓発もおこなっています。
それからライトダウンキャンペーンにも参加しました。昨年は、7月7日に全国的規模で大々的に行われましたが、当社でも本社や工場で事務所照明や社名看板の一斉消灯を実施しました。

 

「排出権取引」の現状
今までわれわれの取組みをお話しさせていただきましたが、続いて「排出権取引」についての一般論から今国内で取り組んでいる状況についてお話しします。
まず排出権という形で定義されているのは、国や企業に対して、一般的にはCO2への換算をした数字で出されていますが、CO2などの温暖化ガスの排出数量を決めた枠というところです。それはここまでだったら排出してもいいですよというものです。それに対して、排出権取引というのは、一定の範囲内、自分たちが許された量の範囲内で排出をして、まだ排出権に余裕があるというところは、その残りの排出権を取引できるということになるわけです。そうすると、自分たちが課せられた排出量を達成できないところは、設備投資なり何らかの取組みを行ってCO2の排出量を削減するか、他社、他国の排出権を購入して、排出量を削減するということが選択できるということです。
割り当ての方法は、ヨーロッパでよく行われている「キャップ&トレード」という方式があります。全体でキャップを決める。つまり排出量の上限を決め、それ以下で事業活動を行った所は余った分を売却することができる。それ以上排出してしまった所は、その部分に対して罰金を払うか、それとも排出権を買ってきて、それに充当させるという取組みです。
それから「ベースライン&クレジット」という取組みは、セクター別の取組みでそれぞれの業界、それぞれの企業におけるベースラインを決める。例えば、ベンチマーク方式であれば上位の何社かの平均値を一つの基準にしてベースラインを決める。ベースライン以下であればこの分は売却できて、排出権で言うとクレジットになる。オーバーしてしまうと購入しなければならない。キャップ&トレードの場合はキャップが排出量上限値として決められたりするわけですけれども、ベースライン&クレジットの場合には、それぞれ業種や企業にその数値を課すという形です。
排出権取引制度のメリットは、排出量の取引の場があれば設備投資をするか購入するか選ぶことができるということです。
環境省「平成18年度温室効果ガスの自主削減目標設定に係る設備補助事業」の時に当社が取り組んだ事例ですが、関東の茨城県にある工場で、燃料転換を行いました。この設備は、トータルで14億円ぐらい掛かっているのですけれども、環境省に約束した2007年度の目標削減量4万4,750トンに対して、実質4万5,308トンの削減ができました。その余剰分の558トンが取引して良いという認証を受けたCO2の数量です。
続いて、環境省の自主取引制度、続いて京都議定書をベースにした「京都メカニズムによる削減」についてお話しします。一つは普通の排出権取引、Emission Trade(ET)。それからClean Development Mechanism(CDM)という、先進国が発展途上国で様々な技術や投資を行って排出量を削減した分を持って帰ってくるという、一般的に使われている制度です。それからJI、Joint Implementationは、そのプロジェクトを共同で実施してできたもの、こういうものも使えるということです。政府は、CO2排出を2050年までに現状から60ないし80%削減すると言っています。これについて、われわれは、稼働率の向上であるとか、企業集約による新鋭設備へのスクラップ&ビルドであるとか、いわゆるゴミをエネルギーとしたエネルギー開発、そういうものも行っていきたいということを考えています。
 
最後に、ごみ減装実験のような、社会環境の変化、社会意識の変化が世の中を変えていくはずだと思いますので、ぜひ皆さんも皆さんの世代の責任を果たしていただきたいと思います。