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レンゴー環境経営講座

企業の環境経営とCSR
講師:レンゴー(株) 取締役 兼 専務執行役員 岸本 一輝


1. CSRと環境対策
2. 紙は環境に優しいか
3. 日本の古紙事情
4. CO2削減について

 

CSRと環境対策
企業活動を継続する間、当然社会情勢の方は変化していきます。すると、お互いの価値観の違いが出てきます。CSRとは、それをいかに克服し解決していくかということです。
日本では、約40年前から公害関係の法令が厳しくなりその範囲はますます広がっています。環境活動といいますと、こうした規制を守ってさえいればいいという考えがなかなか消えませんが、自分たちなりに規制の意味を読み取ることが不可欠です。また、様々な規制あるいは価値観が出てくるということは、ある意味ビジネスチャンスともいえます。こうした流れを利潤に結び付けることができれば環境対策はうまくいくはずだと思います。
当社金津事業所の例をご紹介します。金津事業所は、福井県の芦原温泉の近郊にある工場です。ここでは発酵事業を行っており当然発酵臭がします。しかし、スケールが比較的小さな時はあまり周りのことは気にかけていなかった、このくらいは大丈夫だろうという甘い感覚がありました。ところが、去年事業所の近くに新しい住宅団地ができました。すると、新しい住民の方から「何だ、この臭いは」という苦情が出てくるようになりました。そこで現在、臭いの消却槽など、相当コストもかかりますが、臭いをカバーすべく全力で対応しています。
逆に、非常に大きなテーマとなりますが、いわゆる地球温暖化の問題です。産業革命以後、蒸気機関等の発達によって人間がエネルギーを使うようになりました。それによってCO2等の濃度が高まり温暖化につながったというのが一般的な説明です。ところが、これに反論する方もいらっしゃいます。やはり皆さん一人一人に納得して本腰を入れていただけなければ絶対に解決することはできません。価値観をきちんとお互いに共有するようにいろいろ啓発活動を行っていかないと、こういう動きはなくならないと思います。
20世紀の後半、特に戦後から急激にCO2の濃度が上がっています。これを温度変化の表と合わせればよく納得していただけますので、社内でも社外でもこの表をよく使用しています。皆さんは、温度変化の方に話が行きがちですが、基本的にはやはりCO2の濃度がどう変化するかいうところに話を戻してお互いに価値観を共有することが必要だという、これも一つの事例です。

 

講義風景画像

 

紙は環境に優しいか
皆さんにおうかがいしますが、紙は環境に優しいと思っている方はいらっしゃいますか。そう思われる方は、手を挙げていただきたいのですが。あまりそういう人はいませんかね(笑)。しかし一般的に言えば、様々な意見があるものの、プラスチックに比べれば紙の方が優しいというかたちで恐らく受け入れてこられたのではないかと思います。
ただ、やはり、木を切る。もちろんCO2の問題もありますし、いわゆる土地の荒廃にもつながるから反対だという方もいらっしゃる。一方では、リサイクルは非常にいいことではないかという考えの方もいらっしゃる。あるいは、紙を燃やしてもバイオマス燃料だからいいじゃないかという方もいらっしゃるし、一方では間伐材といえどもこれは大事な資源だから燃やすのはいかがなものかという人もやはりいるようです。
それから古紙の再生品はパルプ100パーセントより優しいのか。これも様々な議論があります。例えばティッシュなどの家庭紙で「パルプ100パーセントと古紙100パーセントとどちらをお使いになりますか」と質問した場合には、半々に分かれるそうです。その人の置かれた環境や年齢差によっても違ってくるということですが、価値観の問題だろうと思います。また、新聞紙のような紙よりも真っ白の紙のほうが実は環境に優しいととらえるメーカーもあります。

講義風景画像

 

日本の古紙事情
どれだけ段ボール古紙を回収したかという比率ですが、現在は100パーセントを超えています。例えば100トンの段ボールがリサイクルに出された。ところが、回収してみたら104トンに増えていたということです。これはどういうことかといいますと、例えば電化製品であれ食品であれ、あらゆるものが海外から輸入されている。当然、輸入された時には段ボールに入ってきます。それをわれわれが回収したということです。一方、利用率は93パーセントぐらいです。10パーセントが余っているわけです。結果的に、輸出というかたちでバランスをとっているのが実態です。
ところが今問題になっているのは、中国の経済が急激にダウンしていることです。その影響で段ボール会社や製紙会社があちこちで止まっている。イコール古紙をお使いいただいていたあらゆる工業が全部止まっているというかなり深刻な状況です。
このように、あまりたくさん輸出されても困るし、全くされなくても困るという、非常に痛しかゆしの状況です。古紙に限らず、ありとあらゆる原料・燃料がこういったかたちで値段が暴騰し、またどんどん暴落しているという状況にあるということです。これが、回収・リサイクルにどれほど大きな影響を及ぼすかということをぜひご理解いただきたいと思います。
現在、段ボールメーカー、製紙メーカー、古紙原料の業界が三位一体となって、こうした問題、安定的な供給体制に取り組んでいこう。輸出が増減するのはやむを得ない。であれば、別枠でお互いに資金を出し合ってうまくやっていこうじゃないかという考えをもっています。そうしないと回収機構そのものを壊すことになります。いつの日か中国が発展してああいうものは要らないとなった時のことまで想定しておかなければならない。実は、それが古紙のリサイクル技術の一番大事なことです。安定的にお互いにそういった業界が譲り合って経済的にもきっちりとした回収システムを作ることが肝要と考えています。
リサイクルするのは、環境のためだけではありません。一つは、コストの面からです。普通、化学品というのはいろいろ高い・安いがあっても、固形分換算すると昔は大体キロ400円でした。それに対して、例えばポリエチレンとかPP(ポリプロピレン)ですと、今は変動しているのでちょっと説明しづらいですが、150円と120円です。それに対してわれわれが扱っているのは古紙です。いやしくもセルロース繊維、間違いなく高分子物質です。にもかかわらず、10~20円程度と、これほど安価な高分子ポリマーはありません。
それから、品質の問題です。紙が水分を吸って反るのを防いだり、あるいは白さや平滑性を出したりということに対しても機能してくれているということです。紙の表面を拡大してみますと隙間だらけです。手でさわるとざらざらしていることがお分かりと思います。古紙の短い繊維でこういったところを穴埋めすると、でこぼこが緩和され、結果的に光も反射しやすくなります。細かい繊維を表面に配置することによって、反射も非常に良くなって白色度もより高まるということです。ですから古紙を使用することは単に環境のため、コストを抑制するためだけではなくて、いわゆる品質向上のためにも使っているということをぜひご理解ください。
それでは、実際にリサイクルはどのように行なわれているかについてお話しします。皆さんの入学試験、センター試験の用紙は終わったらどこへ行っているかをご存じですか。大学の二次試験あるいはセンター試験の時の答案用紙は膨大な量です。名前も書かれている。もとよりプライバシーの問題がある。あまり知られていないのかもしれませんが、実は大学の方は昔からかなりこの処理に困っておられました。私も過去何回か、あちこちの方から「処理してくれないか」というご相談をいただいております。
それから家庭でおそらく紙は全部一緒くたに出されているとは思いますが、新聞やチラシや雑誌、これは全部われわれが使う時は分別しております。例えばチラシはやはり良いパルプを使っていますので、あれを完全にインクを除去して使いますと白色系のかなり良質のパルプの代替品になります。そういうことですから、本当はこういったものは分けてお出しいただければ非常にありがたいのですが、家庭の中でそこまで分別することは困難かもしれません。ただ、ぜひお願いしたいのは、紙はできるだけきちんとわけていただいて、フィルム等ははずしていただく。例えばトイレットペーパーの芯といえども大事な良質の古紙ですので、ぜひ回収にご協力いただきたいと思っています。
市民の方々の支えでうまくいったのがミルクカートンです。あのミルクカートンをわれわれがフリーハンドで集めようとしても、全く集まりません。皆さんのご協力で、あれを洗ってスーパーマーケットなどに持っていっていただいて、そこでミルクカートンだけになる。それで初めて、例えばトイレットペーパーに再生されるという状況になっています。集め方も、実はリサイクル技術の1つということです。

 

CO2削減について
CO2削減に関しましては、「環境のために実施したい」と私の部下が言ってきた時は、私は「馬鹿を言うな」と叱責します。要するに「『環境のため』などというおためごかしは絶対やめてくれ。省エネをやってくれ」と。省エネをやればコストダウンになるだろう、同時に省エネをすれば当然CO2は減るわけだから、つまり両立するのだと。ただし環境のためだけ、などということを言っていると、どこか本当にポイントがずれて、いわゆる永続的・恒久的な対策になり得ないという意味です。
CO2排出量は、2007年度は原発の影響でかなり悪化してきている企業もあろうかと思いますが、レンゴーは、90年比では全体で18パーセント弱の削減を達成しております。本当は21パーセントを目標にしておりました。この3パーセントは原発休止の影響です。
いわゆるLCAのCO2発生量を業界と比較しますと、「ライナ」という段ボールの表面に使う紙でおよそ4対3と、業界平均よりもかなり低い数値でわれわれはものをつくっているという自負がございます。中しん、白板紙でも似たような数値です。残念ながら段ボールは今のところほぼニアリーイコールです。しかし、少なくとも京都議定書で約束されている最終年度までにはこれを10パーセント削減するということで、次々と計画を進めております。
工場だけではありません。いわゆる事務部門とか、皆さんが家庭で使っているエネルギーは相当あります。例えば、当社の本社や研究所といったところで消費電力が最も大きいのはコンピューターあるいはサーバー類で、約3万キロワットに達します。コンピューターというのはそれだけ大量の電気を消費するということを皆さんも覚えていただきたいと思います。