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レンゴー環境経営講座

段ボール産業から見た実践経済学 1
講師:レンゴー株式会社 代表取締役社長 大坪 清


1. 段ボールと名づけて100周年
2. パッケージング・ソリューション・カンパニー、レンゴー
3. 段ボールからの環境対策
4. 段ボールは「波」である

 

日本に段ボールという商品がデビューしたのは1909年です。したがって段ボール産業は本年2009年でちょうど100周年となります。同時に、「段ボール」と名づけ初めて売り出したのは当社ですから、レンゴーの100周年ということでもあります。

 

レンゴーについて
レンゴー株式会社は、創業1909年、資本金310億円、従業員は1万人強、売上4,353億円(2007年度連結ベース)という企業です。段ボール工場26、製紙が5工場その他の直営工場を有し、営業所やグループ企業を含めれば全国におよそ100の拠点、ほとんど全ての都道府県にレンゴーの工場もしくはオフィス、営業所があります。また海外でもアジアを中心に合計27ヵ所の工場を展開しています。

 

パッケージング・ソリューション・カンパニー
段ボールはパッケージの一番外装となります。また、紙器は段ボールの中に入る個包装です。さらに、いわゆるフレキシブルパッケージ、皆さんはコンビニエンスストアなどでおにぎりをお買いになることがあると思いますが、両端を引くと海苔が自動的にあの三角の所に付いて丸められるあのパッケージは、レンゴーの子会社である朋和産業が手がけている包装です。同様に、包装に付いているひらひらした部分を引くとサンドイッチをワンセットずつ食べることができる。これも同様に朋和産業が手がけているパッケージです。
この「板紙」「段ボール」「紙器」「軟包装」「関連事業・海外事業」という5つのコアコンピタンスを上手に活用した「パッケージング・ソリューション・カンパニー」が、レンゴーの会社全体の目的・目標、あるいは理念の一番の基本です。物流に必要とされるのはパッケージです。言い換えればどんな商品もパッケージできるということですが、レンゴーに依頼すれば全てのパッケージが手当てできるというようにしよう、それを「パッケージング・ソリューション・カンパニー」という言葉で表現しているのです。

 

講義風景画像

 

現場主義
私自身が経営理念の1つとしているのが「現場主義」です。ものづくりで最も重要なのは、現場そのものです。ですから、私はできるだけ現場に顔を出して現場の従業員とじかに話をすることを心がけており、彼らに名前で声をかけるようにしています。これは非常に重要なことです。ものづくりをしている以上はツール、設備、プラントを理解していなければなりません。これらのメカニズムは現場に行かなければ分からないわけですから、この現場主義をずっと貫いているということです。
 同時に、現場の人たちとの対話を通して新しいアイデアを生み出しています。ものづくりをしていくなかで、一番重要なことはテクノロジーのイノベーション、新しいテクノロジーをいかに開発していくかということです。レンゴーは段ボールの名づけ親であり、段ボール業界では日本でナンバーワンの企業ですが、そのテクノロジーをさらに進め技術革新を続けていくためにも、現場主義が必要であると考えています。

 

3Sと6S
そのほか、私が従業員に常々要望していることは、業務を進めるにあたっては「3つのS」を大事にするということです。「3つのS」とは、一つはSpeed、ものごとを進める際にはSpeedが非常に重要です。もう一つはSimplicity、ことさら複雑にものごとを進める必要はない。いかに簡潔に簡単にものごとをまとめ上げるかということです。そしてもう一つは、皆さんにも非常に重要なものですが、Self-confidence、自信を持ってほしい。自分自身がこれだけ努力してきているのだから自分の内部に確たるものを持ってほしいということです。この3つが業務を進めるにあたってのごく基本ですよということをずっと言い続けているわけですが、皆さんもこの3つ、ものごとはできるだけ速くスピードを上げて、同時に複雑化しないでシンプルに、そして自信を持つ、セルフコンフィデンス、自分自身を信用するということを心がけていただければ良いと思います。
 もう1つ、私が従業員に伝えているのは「6S」という言葉です。「6S」は皆さんにも非常に重要なものです。6Sの1つ目は整理、2つ目は整頓、3つ目は清掃、4つ目は清潔、5つ目は躾、6つ目は作法。この6つが非常に重要なことでして、この「整理、整頓、清掃、清潔、躾、作法」を皆さんもぜひ頭の中に置いていただければと思います。そうすれば、勉学もはかどるし、人間関係も非常にスムーズにいくはずですから、自ら「整理、整頓、清掃、清潔、躾、作法」と心がけて下さい。
 例えば整理・整頓を進めることによって私どもが一番注意しなければならない、商品の在庫、原材料の在庫が必要以上に膨れ上がることを防げます。それから、清掃・清潔を続けることによって工場内の安全が確保できます。それから躾・作法は一種の教育でもあるわけですが、教育にはコミュニケーションが必要ですので、お互いを分かり合えるという効果があるわけです。
 
企業経営に当たって注意すべき指標

私が会社全体の数字について重点を置いている指標は、EV(Enterprise Value)とEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, And Amortization )です。皆さんが将来会社を選ばれる時にも、このEVとEBIDAを1つの参考資料にされたらよいと思います。
 なぜEVが重要かと申しますと、これはネット有利子負債(有利子負債から、現預金等すぐにキャッシュにできうるであろうものを差し引いた金額)といわゆる時価総額を足したものです。時価総額は、これはこれで意味がある指標ですが、これと同様に重要なのはその会社に対する信用度合いを表しているともいえる有利子負債です。この両方を足したものがEVということです。それからもう1つのEBITDA、これは利益に税金、償却、金利といった数字を加えたもので、真の意味でのキャッシュフローを示すものです。
 さらにもう一つ、注意すべき指標はフリーキャッシュフローです。会社はストックベースとキャッシュフローベースの二つで経営されているわけですが、そのキャッシュフローについて、いわゆる営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを足したものがフリーキャッシュフローです。このフリーキャッシュフローがマイナスになった時に財務キャッシュフローでいかに手当てをするか、これをチェックすることは、社長が自分自身で行わなければならない大きな仕事なのです。
 次の大きなポイントはDE(Debt Equity)レシオです。DEというのは、いわゆる有利子負債が自己資本総額のどれぐらいの割合になっているかを示す指標です。これを絶えず意識すると同時に、1つの目標値を設定して経営しています。現在、私はレンゴーおよびレンゴーグループ全体のDEレシオ1.5を1つの基準値としています。これをオーバーした場合には、有利子負債をいかに減らせるか、あるいは逆に自己資本をいかに充実させるか考えなければなりません。
 たとえば超優良会社であっても、DEレシオが1以下であれば、将来性を考えた場合には、大きな意味で会社の活動が将来シュリンクすると予想されますので、このDEレシオを1.5ぐらいに置いて、有利子負債が多少増えてでもさらに新しいイノベーションを続けていく、設備の更新を続けていく、会社を大きくしていくというという方針をはっきりさせる必要があるということです。

 

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環境対策について
現在、段ボール産業に対しても、環境対策への積極的な取組み、新しいテクノロジー・新しい製品・新しい商品を開発していくことが求められています。段ボールには、最も厚みの大きいAフルート、それからCフルート、Bフルート、それ以外にダブル、トリプルといった種類があります。「段ボールを薄くしながらなおかつ強度を生み出す」ということが、大きな環境対策の課題なのです。
 板紙あるいは段ボールケースを作る際、いかに炭酸ガスの発生を少なくするかは非常に重要なポイントです。段ボール原紙を1キロ作る際の炭酸ガスの発生量は、当社は400グラム程度となっています。一方、ヨーロッパでは700グラム強、米国はこれよりまだ少し多いということですから、いかに日本あるいはレンゴーの技術が進んでいるかお分かりいただけると思います。同時に、この紙自体の重量をいかに軽くしていくか、資源をいかに少なくして強度を出していくかということを心がけているのです。
 また、私は日本にCフルートを本格的に導入しようと、2006年から取組みを開始しました。従来のAフルートと比較しても、強度などの面でまったく問題ない製品を作り上げることに努力しているわけです。これはほぼ成功しつつあり、現在レンゴーの全製品の10数パーセントがCフルートに変わってきています。Cフルートを使うことによって、使用する原料を減らせますし、炭酸ガスの発生量も少なくて済むのです。
 さらに、炭酸ガスの数字を追跡することを「カーボンフットプリント」といいます。当社は、「カーボンの足跡」を追求し、カーボンフットプリントの表示を他社に先駆けてオープンにしていこうとしています。
 同様に、低炭素社会に向けてカーボン対策と同時にエネルギー対策を心がけ、2007年、京都工場をリノベーションする際、ソーラーシステムを全面的に採用しました。同工場で必要な電力量は約1,500(キロワット/時)ですが、そのうちの約4分の1にあたる400(キロワット/時)の電力をこれで生み出しています。これを導入するに当たっては、NEDOも積極的にこれを進めてほしいということで補助をいただきまして、今無事に終わっています。現在、福島県の矢吹町に土地約4万坪を手当てして新工場を建設する計画を立てています。この工場では、昼間必要な電力は全てソーラーシステムで賄うという計画を持っていますが、それを実現するには、工場の屋根だけではなく、本来ならば緑地帯にしなければならない場所にもパネルを敷く必要があります。そのため、パネルを敷いてソーラーシステムからエネルギーを生み出した場合にはこれを緑地帯と見なしてほしい、ということを関係省庁と交渉を続けています。このような法的な改良、改変をしないと、本当の意味での日本全体のエネルギー対策あるいは環境対策はできません。この矢吹町の工場がモデルになってくれれば良いと思っています。

 

段ボールとマクロ経済
段ボールは、様々な種類のフルートがあるわけですが、これらは全てサインウエーブ、すなわち「波」です。同じ形で繰り返し起こっている、つまり周期運動している波です。したがって、サインウエーブ=周期ウエーブですから、これは関数として表せるということです。まさしく三角関数が適合する商品ということです。
 マクロ経済も然り。経済は循環するということでいえば、まさしく経済そのものも波であるといえるでしょう。例えば、今回一連の金融危機が世界をものすごい津波で荒らし回っている。これも津波という大きな波で荒らしているわけです。
 一方、これまでのマクロ経済の研究というのが、ほとんど実数でしか行われていないということは非常に重要な問題でして、すでに物理の分野では、地球、あるいは宇宙の創生を分析するためにはどうしても虚数を使った複素数の数式で裏付けをしていかないとできない状態になっています。しかし、残念ながら経済学は実数でしか今のところ追究がなされていません。一部の経済学者の方々が複素数をとりあげはじめてはいますが、まだ本格的なところまでは行っていないというのが現実です。今回の金融危機にしても、虚数的あるいは複素数的な発想がこの問題の対処になかったというところが一番大きいと思います。
ただし、あくまでこれは大坪理論ですから必ずしも正しいかどうかは分かりません。(笑)

 

段ボール産業の構造改革
段ボール産業は、大きく古紙・板紙・段ボールの3つの業界に分けられます。私は、100年という歴史を経て、段ボール産業全体がやや時代遅れの姿になっているのではないかと考え、まず2002年から「プラットフォーム」という言葉を使って板紙の構造改革をスタートさせました。この「プラットフォーム」という言葉は当時の板紙・段ボール業界にはまったく新しいものでしたが、構造改革ができあがってみると「なるほどな」と業界内の方々に理解していただいたものと考えています。