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アジアにおける事業戦略とリーダーシップ

アジアにおける事業戦略とリーダーシップ(1)–1
講師:レンゴー株式会社 代表取締役社長 大坪 清


1. はじめに
2. 海外進出の条件
3. 世界の段ボール事情
4. 金融政策について

 

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1.はじめに

 私の講義は一昨年、昨年に引き続き今回で3回目となりますが、今回は『アジアにおける事業戦略とリーダーシップ』というテーマで講義いたします。レンゴーは1909年に創業し、現在104年目を迎えている歴史のある企業です。1972年に「聯合紙器株式会社」から「レンゴー株式会社」に社名変更し、現在は資本金310億6,600万円、今期の売上高は5,200億円に達する見込みです。
 現在は海外に48工場を展開していますが、アジアへの進出は1930年代まで遡ります。当時は朝鮮、台湾、満州、中国に工場を展開していましたが、1945年の敗戦で朝鮮、台湾、中国の全資産が接収されました。その後、1990年にマレーシアにて、段ボール合弁事業に資本参加したのをはじめとし、シンガポール、タイ、インドネシア、中国、フィリピン、ベトナムへと海外事業を展開しました。そして、現在、ハワイで新工場を建設中で、本年地鎮祭を行い、来春に完成する予定です。ハワイには段ボールの需要があるにもかかわらず、段ボール工場は1工場もありませんでした。段ボールはアメリカ本土から船で運ばれていたため、コスト高の原因となっていました。新工場完成後は現地生産により、コストの抑制につなげることができます。

 

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2.海外進出の条件
 当社がマレーシアに進出した時期は、既に中国に展開していた日本企業が、マレーシアを新たな海外拠点と認識し、続々と進出し始めた頃でした。取引先の日本企業から、包装資材として丈夫な段ボールケースが必要であるとの要請により、当社もマレーシアに進出しました。
 企業が海外進出をする目的の一つは、生産拠点を築くことです。その利点は、レイバーコスト(人件費)を抑え、ローカルコンテンツ(現地調達の原材料)が安く手に入ることです。進出の条件は、電気、水、道路等のインフラストラクチャーが整っていることが必要です。海外からの進出企業に対する優遇税制などについても分析し、進めていくことが大切です。当時のマレーシアはこれらの条件が全て揃っていました。
 また、海外進出には、土地の購入が重要な要素です。経済活動は、「土地・資本・労働」の三つがあって初めて成り立つものですが、海外で土地を所有できるかが大きな問題となります。マレーシアでは、土地のフリーホールド(永久所有権)はできませんでしたが、30年、60年、90年ローンといった長年のローン形式、リースホールド(期限付き借地権)を行っていたため、日本企業が進出できました。
 その後、当社はインドネシア、中国に進出し、現在は中国に19工場、タイに15工場、シンガポールに1工場、マレーシアに1工場、インドネシアに7工場、ベトナムに5工場の計48工場が海外にあります。
 当社では、日本人スタッフの語学レベル向上のため、語学力向上奨励制度を整えており、TOEICの取得点数に応じた奨励金を支給しています。また、グローバル人材育成制度として、海外研修制度も整えています。毎年選抜された数人の中堅社員を対象に、国内研修、海外語学研修、海外実務研修を1年半にわたり実施しています。

 

3. 世界の段ボール事情
 次に世界の段ボール総生産量をみると、2012年は1位中国560億m²、2位アメリカ335億m²、3位日本133億m²、4位ドイツ92億m²、5位ブラジル64億m²となっています。日本の段ボール生産量133億m²は、福島県の面積と同等になります。
 2001年時点では日本133億m²に対し、中国131億m²と、日本は中国を上回っていました。しかしながら、2012年には日本133億m²のままに対し、中国は約4倍半の560億m²に達し、この数値からも中国の成長がお分かりいただけると思います。また、アメリカの総生産量は、2001年の353億m²に対し、2012年は335億m²に微減しているものの、日本同様に大きな変化はありません。対照的に、中国をはじめとするアジア諸国は、ここ10年間で生産量は大きく伸びています。ここから、開発途上国、中進国および先進国との違いが分かります。 
 段ボール製造には、段ボール原紙(板紙)を使用します。段ボール1m²あたりの重さは700g前後ですので、段ボールの生産m²に700をかけると、原紙生産量が推定できます。世界の段ボール原紙の生産量は、2001年は日本942万トン、中国1,060万トンに対し、2012年は日本873万トン、中国4,125万トンとなっています。2012年の中国は、2001年の4倍成長、日本の5倍近くに成長しています。
 世界でCO2が年間にどれほど発生しているか分かるでしょうか。世界では、年間約300億トンものCO2を発生させており、そのうち70億トン以上が中国、50億トンがアメリカ、日本は11.5億トンとなります。CO2の発生量削減は製紙業界にとっても重要なテーマであり、さまざまなエネルギー政策を講じています。日本国内だけでなく、海外でもエネルギー政策、CDM(Clean Development Mechanism:クリーン開発メカニズム)を進めることにより、全体としてCO2の削減効果がより大きくなります。

 ここまでレンゴーと段ボール業界の現状をみてきましたが、製造業が海外に進出する目的の一つは、「生産拠点」として進出すると同時に、その地域を「マーケット」として捉えることです。「生産拠点」を築くためには、土地、労働力、資本のほか、現地で原材料をうまく調達すること、現地の従業員をうまく育てることも重要です。また、「マーケット」を求めて進出する場合、その土地に大きな市場があり、製品の供給体制を整えることも必要です。

 

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4. 金融政策について
 アメリカではバーナンキFRB議長の金融政策により、景気が回復してきています。上院と下院のねじれにもかかわらず、景気が大きく回復したのは、バーナンキ議長の金融政策「QE3(Quantitative Easing 3)」による量的緩和の効果が大きいとされています。毎月日本円にして何兆円という金融緩和を続け、アメリカは景気回復に成功しました。 
 アメリカの金融政策と同様に、日本では黒田日銀総裁が「大胆な金融政策」を打ち出し、この効果により、円安と株価上昇につながっています。企業や個人は、日本国のGDPの付加価値として財を産み出していますが、以前はそれに見合った通貨の発行量が少なくなっていたため、通貨の発行総量と産み出されるGDP総量とのバランスがとれなくなっていました。通貨の発行総量が少なければ、GDP総量もバランスをとって少なくなるためデフレが起こります。そこで、通貨、マネタリーベースを上げ続けることにより、物価上昇につなげていくのです。重要なのは、つくりだした財貨と通貨発行量のバランスをいかにしてとるかということです。このシステムを実行できていなかったことが、ここ数年間の不景気の原因となっていました。デフレに関するこの理論には、さまざまな異論がありますが、私はこれが一番正しいと思っています。

 

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