環境・社会 / 生産性が未来を拓く(Productivity is a state of mind)

生産性が未来を拓く(Productivity is a state of mind)

生産性が未来を拓く(Productivity is a state of mind) 2
講師:レンゴー株式会社 代表取締役社長 大坪 清


5. 現場にこそ真理がある
6. 第3の矢、民間の責務
7. 新仙台工場の建設
8. Productivity is both an art and a science
9. 5Sと6S
10. 結びに

 

5.現場にこそ真理がある
 私は、会社の経営や国の経営の基礎は、現場にあると考えています。現場にこそ真理があり、現場を知らずしてマネジメントはできません。
 私は本社に出社したら毎朝各フロアーを回り、工場でも直接現場を視察し、各現場の人間の名前をできるだけ努力して覚えるようにしています。「現場にこそ真理がある」ということが私のマネジメントの基本です。

 

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6.第3の矢、民間の責務
 アベノミクスについて、その効果は、行き過ぎた円高からの脱却と株高として表れ、まずはわが国経済の回復への期待感を生み出すことに成功しています。このように、生産性の向上あるいは経済を発展させるためには、人間の心(state of mind)を変えていくことが非常に重要です。言い方を変えると期待感を生み出すのに成功したということです。大胆な金融緩和と機動的な財政政策に続く第3番目の成長戦略は、政府ではなく、民間が責任を持って、各企業が進めなければなりません。3本目の矢を射るのは民間の責務であると私は考えています。それをバックアップしていくことが政府の役割であり、規制緩和もその方法の1つといえるでしょう。
 本当の成長戦略を進めていくために、民間が行うべきことは、まず投資をできるだけ行うことです。このような持論から、レンゴーグループでは、現在、従来以上に活発に設備投資を進めています。当社新名古屋工場の建設や、岡山の瀬戸内市にグループ会社の段ボール工場の建設、同時に、国内外に拠点を持つ重包装会社の株式取得を行っています。
 貯蓄主体から投資主体へ、投資を大きくしなければ日本は衰退していきます。
私は、人口減少自体は国の衰退にはつながらないと思っています。例えば、英国は人口6,200万人であり、フランス、ドイツも、日本よりはるかに少ない人口です。ところが、世界の中で日本のプレゼンスはどんどん小さくなってしまっています。
 ぜひ強い日本を取り戻し、プレゼンスを向上させていかねばなりません。

 

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7. 新仙台工場の建設
 3.11の東日本大震災の日、その地震が起こった時刻に、私は伊丹空港発、羽田空港行きの飛行機に搭乗していました。羽田空港到着前に旋回しはじめ、羽田空港が閉鎖になったというアナウンスがあり、伊丹空港に再び戻ることになりました。会社に戻り、すぐに対策本部を立て、情報を集め、震災と津波で再建不能となった仙台工場での同じ場所での復旧は不可能と判断し、新たな土地を探し、わずか1年で新たな新仙台工場を再建しました。

 この震災からの復興は、完全に破壊されたところからの創造、非連続からの創造であり、経済学者シュンペーターの言う「破壊と創造」を実行したということです。
 このようなことを実際に行うには、野性的な精神力、いわば、ケインズが使った言葉「アニマルスピリッツ」が必要となります。この当社の新仙台工場の復活は、いわばシュンペーターとケインズの理論を足して2で割って実行した結果と考えていただければと思います。

 

講座資料

 

8. Productivity is both an art and a science
 生産性とは何でしょうか。1959年、ヨーロッパ生産性本部がローマで生産性大会を行った際に、生産性とは何かというステートメント、ローマ会議報告を発表しました。

 

「Productivity is above all things a state of mind. It is the belief that it is possible to make today better than yesterday. It is the will to make improvement no matter how superb the present condition. It is belief in the progress of mankind.」

 

 「生産性とは人間の心の持ちよう」ということです。今日は昨日よりも、明日は今日よりもよくしよう、新たなことを不断に進めていこうという信念を持ち、さらに改善魂を持ってことに当たろうとすることが人類の進歩につながります。生産性という言葉の本当の意味はここにあります。
私は、このローマ会議報告は、サミュエル・ウルマンの「Youth」という詩から出てきているのではないかと考えています。

 

「Youth is not a time of life ; It is a state of mind. It is a matter of the will, a quality of the imagination, a vigor of the emotions. It is the freshness of the deep springs of life. Nobody grows old merely by a number of years. We grow old by deserting our ideals.」

 

これらを合わせ、私がつくった言葉を紹介します。


「Productivity is both an art and a science. You can prepare for productivity quite scientifically but the execution of productivity has quite a lot to do with one’s artistry. 」 


 生産性とはアートであり、人間がつくるものです。投入量と出来上がりや数字の計算だけで生産性の向上を考えてはいけません。準備は科学的に行わなければなりませんが、生産性の向上の実行についてはまさしく人間の心が関係しているというのが私の結論です。 
 ここでのアートというのはシックスセンス、人間の六感「心」です。視覚、聴覚、臭覚、味覚 触覚、これら五感に、「心」を加えた六感を使って生産性を判断するということです。生産性には、このような捉え方があることを知っておいていただきたいと思います。

 

9. 5Sと6S
 アダム・スミスは、道徳感情論において“Sympathy”という言葉を重要視しました。
私が社内でよく言う言葉に、「5S」があります。英語のSがつく5つの言葉です。
考え方をできるだけ単純化する“Simplicity”。ものごとのスピードをあげてほしいという“Speed”。そして、ことを行うに当たり、自信を持ってほしいということで“Self-Confidence”。これは日本語の「矜持」という言葉に当たります。
 “Sentiment”非常に細やかな感情を持つこと。そして“Sympathy”これは「惻隠の情」であり、相手の立場に立ってお互いに分かり合う努力をすることです。
皆さんも、矜持と惻隠の情を持って、過信ではなく自信を持ち、相手を思いやりながら、学生生活を送ってほしいと思います。
 相手を思いやる心と同時に、「6S」が会社経営の基本です。これは日本語のSであり、整理、整頓、清潔、清掃、躾、作法を表しています。これらは非常に重要であり、諸君もこれを肝に銘じて勉強していくと成績もあがっていくことでしょう。
 以上5Sと6Sを覚えていただきたいと思います。

 

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10. 結びに
 最後に、諸君へ期待したいことは、日本の歴史についてよく知っておいてほしいということです。日本人は自国の歴史をあまりに知らなさすぎるのではないかと思います。例えば、神武天皇が紀元前660年に即位してから、今年が2673年に当たることなどは知っておいていただきたいと思います。その神武天皇について書かれている古事記、日本書紀について、せめて社会に出ていく前に日本の原点を知るうえで読んでおいていただきたいと思います。
 また、明治以降の歴史にも関心を持っていただき、現在の日本の状況がなぜこうなっているのかをよく理解できるよう努力していただくことを願い、この講義の結びとします。