環境・社会 / わが経営~Productivity is a state of mind~

わが経営 Productivity is a state of mind

わが経営~Productivity is a state of mind~ 2
講師:レンゴー株式会社 代表取締役社長 大坪 清


4. 生産性の向上
5. 資源の有限性
6. 生産性向上、アダム・スミス、5S、6S
7. 最後に

 

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4.生産性の向上
「生産性3原則」は、雇用の維持、労使協議、成果の公正配分の3つです。
GDPとは、資本と労働を投入して経済、つまり財貨とサービスを生み出した、その付加価値の合計です。
 GDPも非常に重要ですが、GDPをつくり出すための総供給、総生産も非常に重要です。当社のように、中間財的な財を製造している会社には、特にGDPだけではなく総供給の数字が重要です。日本は今、総供給は約1千兆円強です。この1千兆円強から中間財が消去されて最後に付加価値として残るのが、実質GDPで約510兆円、名目で470兆円ぐらいということです。我々の業界では、この1千兆円という総生産の動きがどうなっていくのかということに注目をしています。

 

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 我々の業界も含め、日本で問題となることは、生産性の向上と、生産量の向上を混同して考えてしまいがちな点です。生産部門でみると、変動費(variable cost)をカバーできた段階の利益の一つに限界利益(marginal profit)があります。固定費(fixed cost)をカバーするために、限界利益を大きくしていかなければなりませんが、日本では、生産性を向上させることよりも、各社が生産量を向上させる方向に進みがちです。その結果、総供給のほうが需要よりも多いということにつながり、これがデフレの一つの原因につながっているのではないでしょうか。
 もう一つは、日本で発行される貨幣の総額が、日本でつくられている財とサービスの総額よりも少ないということです。貨幣がそれだけしか発行されていないところにいくら財とサービスをつくっても、その財とサービスは貨幣の総額に合わせなければならないということで価値が減じていくということなのです。
 今回のアベノミクスの大きな柱は、金融緩和と財政で、日本でつくられた財とサービスの総額に見合うだけの金融面のバランスを取っていくことから、デフレ解消につながっていくと思います。

 中国の四書「大学」に「治国、斉家、修身、正心、誠意、致知、格物、平天下」という言葉があります。特にこの中で、国を治めるためには家をととのえ、家をととのえるためには身を修めるという「斉家修身」を覚えておいていただきたいと思います。最近の学生や若い方は、家をととのえる斉家ができていない面があるのではないでしょうか。そのためには自分の身を修めることが必要です。さらに「格物致知」という言葉、格物というのは物の道理を追求するということであり、そのためには知に至れということです。つまり頭を働かせて物の道理を理解しなさいということです。治国、斉家、修身、正心、誠意、致知、格物、これらをととのえることで平天下、天下が平らになるということです。
 生産性の原点は、“state of mind”であるとお話ししました。その状態をつくり出すためにはこういうことも必要であるということです。

 

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5.資源の有限性
 次は、資源の有限性に関するキーワードです。資源は有限であることはお分かりだと思いますが、例えば不況時に企業として心がけるのは、「出ずるを制し、入りを図る」ことです。ロスの削減など、出ずるを制しにかかるわけです。景気が良くなると、「入りを図り、出ずるを制す」となります。安倍政権の発足で、今年上期、6月ぐらいまでは景気が悪く参議院選挙の後に何とか持ち直すのではないかという方が多いかもしれません。私は1月、2月、3月以降、景気はかなり良くなってくると思っています。このような状況では「入りを図る」という動きも必要です。当社では、このタイミングに名古屋地区での新工場建設や米国ハワイでの工場建設などの新規投資を行っています。
 我々の業界では、板紙や段ボールをつくり、ユーザーにお届けします。段ボールは100%リサイクル可能な包装材です。使用後の段ボールは古紙となり、古紙業者を通じて、再び我々の製紙工場に戻り、そしてまた再び段ボールとして製品化されるリサイクルシステムで回っています。「YIELD-UP」という言葉があり、これは製紙用語で製紙の歩留まりを上げるということです。“Yield”には様々な意味がありますが、製紙業では歩留まりとなります。
 製紙工程で、例えば段ボール古紙100トンを、パルパーと呼ばれる、古紙を溶解し紙の原料をつくる設備に入れると、最終的に何トンの紙が出てくるものでしょうか。板紙を1トン製造するには水を5、6トン使用します。水で紙の繊維原料を流しながら紙を抄いていくのです。30年ほど前まではこのyieldは90を超えていませんでした。つまり100トンの原料を入れて出来上がってくる紙は90トン弱ということであり、あとの原料は水と一緒に流れてしまったということです。しかし、改良を重ねることで今は96トン程度の紙ができるようになっています。つまり、歩留まりは96%であり、現在もさらにこの歩留まりを向上させるための研究を行っています。
 段ボールも同じです。段ボールを作るのに100トンの紙を使って段ボールケースがどれぐらいできるものかトン換算すると、現在90トン弱であり、約10トンがロスとなってしまっているのです。これを10%未満とするようにこれも社内で研究を進めています。
 原料を仕入れて、板紙や段ボールを作って、ユーザーに届けるまでの流れを動脈産業、使われた古紙が再び回収され、製紙工場の原料として戻ってくる流れを静脈産業といいます。それぞれを担う製紙、段ボール、古紙の3つの業界を一体と考え、三位一体での経営を考えなければならないということが私の持論です。

 

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6. 生産性向上、アダム・スミス、5S、6S
 アダム・スミスは「国富論」が有名ですが、同時に「道徳感情論」(The Theory of Moral Sentiments)も重要だと思います。むしろこちらの方が実生活には役に立つのではないでしょうか。「道徳感情論」では、スミスは、社会生活あるいは経済生活を営むにあたっての、基本的な、知っておかなければならない言葉をあげており、私はそこから「MEPhS」という言葉をつくりました。MはMorality、EはEthic(倫理)、PhがPhilosophy(哲学)、SはSentiment、もう一つのSはSympathyです。この言葉が、私が考える経済活動の原点です。

 先ほども申しあげたように、生産性とは、要は心の持ちようです。数字だけではどうしても表せないもの、それが人間の心の持ちようです。もちろん五感の目、耳、鼻、口、手を働かせて生産性向上に努めていただくことが大事ですが、心の持ちようには、六感が非常に重要です。

 この心の持ちように関連し、レンゴー社内で私がお願いしている「5S」と「6S」を紹介します。5Sというのは英語のSがつく5つの言葉です。

 

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 “Speed”ものごとをすすめるためのスピードです。“Simplicity”ものごとを複雑にしてはいけない、簡単にしなさいということです。そして、“Self-Confidence”自信を持つということで、これは「矜持」という言葉になります。“Sentiment”非常に細やかな感情を持つことです。そして最後が“Sympathy”これは「惻隠の情」であり、相手の立場に立ってお互いに分かり合う努力をすることです。この5つが5Sです。
 6S、これは、私が絶えず社内でも言っている言葉で、整理・整頓・清潔・清掃・躾・作法の6つです。この6Sはレンゴーの企業経営の原点です。
 そして、「自立と自律」。自分で律する(Autonomy)、自分で立つ(Independent)ということを、講演などの機会に言い続けています。

 

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7. 最後に
 最後に、若き諸君たちへ贈る言葉についてお話したいと思います。
安倍政権となり、少し左に沈みかかった日本という船を真ん中に戻そうという動きがようやく始まっていますが、一部メディアは、この戻そうとする動きを「右がかっているのではないか」と騒いでいます。しかし、これはむしろ少し左に傾きかけていたものが、元に戻ってきたということではないでしょうか。現在は中道を走る政権が出来上がったのではないかと思っています。
 我々は、あらためて、一人一人が日本という国を意識して生活する必要があると思っています。そのために国富や国益ということについてよく考えて欲しいと思います。そのためには国防も重要であり、国の防備について考える体制を作っていかなければならないと思います。
 そのような意味で、今の日本国、今年は何年にあたるでしょうか。西暦では2013年、キリストが生まれてから2013年経ったということですが、日本国として今年は2673年に当たります。日本国が出来上がったのは紀元前660年2月11日、神武天皇が即位された時が日本の建国とされ、今も2月11日は建国記念の日として祝日となっています。それから計算すると今年は2673年となるのです。このようなことについても、どこかで意識をしながら勉強していただきたいと思います。
 もう一つ私の好きな言葉をご紹介します。月日の経つのは非常に早く、月日はどんどん去って行くという意味の「Time and tide wait for no man」です。時間と潮の流れは人間の動きを一切待たないという意味です。
 皆さん方には、時間を大切にしつつ、勉学、あるいは自分の生活に励んでいただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。