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経営者と語るリーダーシップ

経営者と語るリーダーシップ
講師:レンゴー株式会社 代表取締役会長兼社長 大坪 清

大阪大学大学院 グローバルリーダーシッププログラム
2016年1月21日(木)於 大阪大学大学院国際公共政策研究科



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 本日は、講義ではなく、ゼミナール形式でのフリーディスカッションで進めたいと思います。まず私からしばらくお話しし、そのあと質疑応答という形で、皆さんのご質問にお答えします。

 私は昨晩ハワイ出張から帰ってきたところです。
 ハワイには段ボール工場がひとつもなく、全てをハワイ以外から調達していましたが、2014年7月、当社の100%子会社であるレンゴー・パッケージング社(RPI)が、ハワイで唯一となる段ボール工場を開設しました。
 その段ボール工場では、ソーラーパネルを工場の屋上に設置し、必要な電力の3分の1を賄っています。当初、太陽光発電の稼働に必要となる州政府の許可がなかなか下りないという問題が発生しました。問題解決のため、私が直接陣頭指揮をとった結果、すぐに許可を得ることができました。
 ハワイの段ボール需要は、200万㎡ほどです。昨年12月に、RPIの生産量はその50%超となる110万㎡弱となり、月次ベースで黒字となりました。開設からわずか1年半で黒字転換するとは思っていませんでしたが、非常に速いペースで利益を上げることができました。

 Leaders Celebrateという言葉があります。私は、経営トップ自身が出向き祝辞を述べるのが良いだろうと考え、タイトなスケジュールでしたが現地へ足を運び、約60名の現地従業員を激励し、本当のコミュニケーションと対話を行うとともに、経営トップとして挨拶をしてきました。

 このように私は、現地で問題が発生したときや、現地従業員とコミュニケーションをとる時には、経営トップ、リーダー自らが行動する、ということが非常に大切なことだと思っています。

 

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 当社はハワイ以外でも海外展開を進めていますが、特にポリネシアンやアメリカンなどを相手に話をする時は、多少なりともユーモアを交えた挨拶をしなければならないと思います。
 先日のハワイでの挨拶も、現地の挨拶である「aloha(こんにちは)」から話し始めました。その場に、現地の従業員と、一部アメリカ本土から来ている方がいたからです。
 そして、
“It’s a great pleasure for me to be here with you in this occasion.”
(この特別な機会に皆さんにお会いできて非常にうれしいです。)
“I left Japan Sunday noon, and I just arrived here in Sunday morning of the same day. Very lucky. I have two Sundays.”
(日曜日の昼に日本を出発し、同じ日曜日の朝にこちらに到着しました。日曜日が2日もあってとてもラッキーです。)
と、ユーモアを入れた挨拶をしたところ、その場が盛り上がりました。
 そして“I’d like to take this opportunity to express my sincere appreciation.”
((12月に優秀な業績をあげられたことに対し)本当に心から感謝申しあげます。)
というと、さらにその場が盛り上がりました。

 その挨拶の中でお話したことを、しばらく皆さんにもご紹介します。

 これから先、何年もよい業績であり続けるためには、やはり生産性(productivity)を向上させていくのが最も重要です。
 では、“生産性が向上する”とはどういうことでしょうか。

 生産性には大きく分けて「労働生産性」と「資本生産性」の2つがあります。「資本をどれだけ投下して生産性を上げるか」、「労働をどれだけ投下して生産性を上げるか」ということです。
 経済活動とは、「土地」と「労働」と「資本」を投入して、「財貨」と「サービス」を作り出す、ということが基本です。
 「土地」「労働」「資本」の3つがそろってはじめて経済活動ができます。
 そのうち「土地」は固定的なものなので、「労働をどれだけ投下して生産性を上げるか」、「資本をどれだけ投下して生産性を上げるか」、この2つが非常に大きな要素となります。

 「労働生産性」と「資本生産性」とは相反する要素です。「労働生産性」を上げるために「資本」を投下すると「資本生産性」が悪くなり、「資本生産性」を上げるために「労働」を投下すると「労働生産性」が悪くなるという問題があります。
 生産性とは、「労働」と「資本」をインプットし、付加価値である「財貨」と「サービス」をアウトプットすることです。この付加価値を大きくするために、インプットの「労働」と「資本」をどれくらい投下していくか、それが生産性向上の基本です。

 

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 それでは、生産性を向上させるためには、具体的にどうすればよいでしょうか。
 段ボール工場で一番必要なのは、「Reducing loss」「Reducing waste」、すなわち全体のロス(total loss)をいかに最小化(minimize)していくか、ということ、もう一つは、在庫をいかに適正な状態とするか、ということです。同時に、いかに利益(profit)をあげていくか、生産(production)そのものを効率的に増やしていくことが必要です。“Reducing loss & waste and increasing production & profit”ということに全面的に取り組まなければならなりません。

 それが、RPIで働く皆さんに課された、いわば「これが全てだ」という課題です
 “That is TINA.”という、非常に有名な言葉があります。これは、マーガレット・サッチャーが様々な方針を決定する際に使っていた言葉で、「これしか方法はない」という意味です。“TINA”とは、“There Is No Alternative.”の頭文字をとった言葉で、この言葉を使うと、その場はとても盛り上がりました。

 そして最後に、ハワイ語で「家族」という意味を持つ“ohana”という言葉を用いて、“We are ohana.”(我々は家族です)と言いました。そして挨拶は盛況のうちに終了しました。
 リーダーシップをとる人にとっては、ユーモアのある話をすることが非常に重要です。多少ユーモアを交えながら、場を盛り上げることができるのも、ひとつのリーダーシップだと思います。

 それでは、私が考えるリーダーシップについてお話します。
 私が社内でよく言っている言葉があります。

「従命利君、為之順」(命に従えて君を利する、之を順と為し)
「従命病君、為之諛」(命に従いて君を病ましむる、之を諛(ゆ)と為し)
「逆命利君、謂之忠」(命に逆らいて君を利する 之を忠と謂い)
「逆命病君、謂之乱」(命に逆らいて君を病ましむる、之を乱と謂う)

 社内でリーダーがいれば、そのリーダーに従ってやっていこうということになりますが、それが「従命利君」で、これは「順」である、としています。
 従ったふりをして、リーダーを病ましむ人間も結構いるのですが、それが「従命病君」で、これは「諛(うそつき)」である、としています。
 「逆命利君」とは、命に逆らっても君を利すると、これが本当の「忠」です。たとえば、社長が間違ったことを言うとします。神様でも仏様でもないので、間違いは必ずあります。それに対して、「社長それは間違っています、私はこう思います」ということが、正しいことなのです。

 いつも社長に逆らって、嘘ばかりついて、きちんとやらないのが「逆命病君」で、これは「乱」である、としています。
 ですから、「諛(ゆ)」と「乱」にはなってほしくはなく、「順」か「忠」になってほしいと思います。リーダーシップを発揮しながら指導して、お互いにそのようになっていくようにするのが、社長の仕事であり、そして従業員の仕事でもあります。


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 もうひとつ、社内でよく使っている言葉を紹介します。
 今から70年以上前、江田島(現 広島県江田島市)に海軍兵学校がありました。その教育の場で語られていた言葉が、「五省(ごせい)」です。

一 至誠に悖るなかりしか (真心に反することはなかったか)
一 言行に恥づるなかりしか(言葉と行いに恥ずかしいところはなかったか)
一 気力に缺くるなかりしか(気力が欠けてはいなかったか)
一 努力に憾みなかりしか (努力不足ではなかったか)
一 不精に亘るなかりしか (不精になってはいなかったか)

 夜間、自習止め5分前のラッパが鳴り響くと、生徒は素早く書物を机の中に収め、「五省」を自分自身で頭の中で唱えます。自分自身の頭の中で唱えた後寝る、というのが昔の海兵隊のやっていたことです。

 アメリカ軍が日本を占領していた時に江田島で見つけた「五省」に感銘を受け、メリーランド州にあるアナポリス海軍兵学校に持ち帰り、「Five Reflections」として掲げています。

 これは非常によい言葉なので、私は社員一人一人がコピーして持っておけばよいと思っています。
特に二番目の「言行に恥づるなかりしか」とは、自分の言っていることとやっていることに違うところははないか、ということです。そのようなことは必ずあるわけで、一日の反省として、「五省」を唱える、ということをやっていってもらいたいと思います。
 気力に本当に欠けることはなかったか、努力が足りないことはなかったか、どこかでズルなどしていなかったか、いろいろと反省材料にしてもらいたいと思います。

 このようなことをリーダー自身が実行し、それを皆さんに分からせて、そしてお互いに反省をする、というようなことができるようなグループ、組織に仕上げていくというのも、リーダーシップの非常に重要なことです。それを今、当社内でも徹底してやっています。

 

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